アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

ようやく読了いたしました。
実は、伊坂幸太郎作品はまだ「オーデュボンの祈り」「陽気なギャングが地球を回す」の3つしか
読んでいないのですが、毎回「やられた!」と思います。


伊坂作品の特徴のひとつとして、綿密に張り巡らされた伏線、がよく挙げられていますが

この作品はそれが非常によく機能していると感じました。「現在」と「二年前」とを交互に見せる構成が、
伏線をより違和感無く着地させています。
伏線、というよりも、登場人物の行動やちょっとした言葉、が他の人物の行動・思考に影響している。
それによって事件が起こったり、起こらなかったりする。という登場人物達の
係わり合いが書かれていて、
それは考えてみれば現実の世界でも全く当たり前のことですよね。
だからこそ、物語はシュールな設定・展開なのに、キャラクターたちには手触りを持った現実感があり、
読者は感情移入し、愛着を持ってしまうのだと思います。


伊坂作品はいつも世の中の不条理や個人ではどうにもならない突然の不幸を嘆いていますが、
けして絶望していない。どころか世界・人間(もちろん動物もですよ!)への溢れる愛に満ちている。
世間が嫌いなそこのアナタ!伊坂幸太郎を読んで、世界の祝福を知るのだ!!
世の中そんなに捨てたもんじゃないぞ!!


以下ちょっとネタバレなので注意。


椎名は、「自分は物語に飛び入り参加したのであり、脇役である」と認識していますが、
いやいや、やっぱり一人ひとり、自分が主役の物語を持っているのですよ。
いつか彼が主役の物語を読めるのでしょうか。楽しみです。
それにしても読了後、最初に戻ってまた読み始めると、そこには初読のときとは
全く違う河崎=ドルジがいて唖然としますよ!!「一年前」の物語が垣間見えて、面白いです。